-  s t o r y  -

青年は旅をしていた。
その日その日の糧を得ながら、街から街へと旅を続けていた。
路銀が尽きたある時、彼は一つの求人広告を見つける。
衣食住を保証し、賃金も良いそれは彼にとっては願ったりかなったりだった。
仕事の内容はそう難しいことではなかった。
とある学園の所有する合宿施設の管理人を2週間の間、代理でやってほしい、という事だった。
ただ、2点だけ少しばかり特殊な部分があった。
一つはそれが本土からクルーザーで2時間ほどの所にある、孤島にあるということ。
いま一つは、彼が管理している2週間の間、学園の女子水泳部が合宿に来る事だった。
人との関わりを煩わしく思う彼にとって、その条件はほんの少しだけ、気に障るモノだった。
だが、深くかかわらなければ大丈夫だろう……彼はそう思って、その仕事を引き受けた。
その2週間は何事もなく過ぎることだろう。
彼はそう信じていた……。
施設に入った彼は、早速自分の仕事を確認する。清掃、プールに水張り、等々……。
一通りの作業を終えた彼は、自室と定めた和室へと足を運び、休憩していた。
横になり、此処しばらくの旅の記憶を整理していた。
ふとその彼の目に、わずかにずれた天井板が目に付いた。
何か気になる……と彼は脚立を用意し、その天井板がずれている部分を探ってみた。
天井裏に空間がある。
そして、そこに何か積み上げられたモノがあることを知った。
それは、幾本ものビデオカセットテープであった。
置かれていたデッキに挿入し、再生した彼は一瞬絶句した。
それは、明らかに施設の何処かを撮影したモノだった。
画面の中では、無邪気に笑いながら少女達が着替えをしていた。プールの更衣室である。
眉をひそめた彼は早送りし、その先に映されているものをじっと見つめた。
トイレ、風呂、あらゆる所で撮影したビデオは彼に心理的な衝撃を与える。
画面の中の少女達は屈託無く笑い、或いは巫山戯ながらしかし撮影されているという意識は感じられない。
明らかにこれは盗撮したものである事が伺い知れた。
彼は無言でテープを取り出すと、それを天井裏へと戻す。
もしこれが彼のモノであると思われたらどうなるだろう?
誰が彼を信用するだろうか?
そうでなくする方法はあるかもしれないが、些か面倒な事になるのは違いない。
それならば、見なかったことにしてしまえば問題ない……。
だが、心の何処かにビデオに対する興味が残っていたことも確かだった……。







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2003 WAFFLE